卵掛五郎

ITエンジニア。適当に読んだ本の感想や日々所感を綴るブログです

【読書】【トンデモ本】本当に「神メンタル」なら騙されない『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』(星 渉(著))

「実現するまでやり続ければ失敗はそもそもない」

 

 Amazonでの評判は非常に高いのだが、こんなアホみたいなトートロジーが出てくる時点で私にとってはトンデモ本以外の何物でもなかった。

 

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 私は海外(アジア)在住の身であり、日本の紙の本が手に入らない。よって、日本の新刊本を読む際はKindleで読むことになる。
最近、仕事で大きな失敗をしてしまい、各方面から非難やダメ出しを食らいメンタルが弱っていると自身で感じる中、次に読む本を探しているときにこの本が目に止まった。 

神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り

神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り

 

読んでみて正直思ったのは…、

 

「さすがにこの内容を鵜呑みにするほどメンタル弱くねぇよ」

 

でした。そういう意味で読んでみてよかったかどうか、という意味では結果的によかった。
 
 所々に実践的なワークや脳にまつわる薀蓄が書かれているが、内容は他の自己啓発本と同じで要するに、

 

「あなたが本当に強く望めば、思い通りに望みがかないます」

 

ということを大した根拠もなく言っているだけ。

著者の主張は、明確かつ具体的になりたい自分をイメージし、実現を思い込むことができれば、脳が勝手にそのために必要な行動を選択するようになる、というもの。



例えば、



 ・自分が求める理想を想起させる画像を30枚以上集めて毎日見る
 

 ・一年後の自分になりきってインタビューを受ける
 

 ・毎日、鏡の前で実現させたいことを宣言する


 

等の行動をすれば、脳が自身の「思い込み」と現実とのギャップを感じて、ギャップを埋めるために必要な行動を勝手に選択するようになるという。

 

 そして、著者がいうところによると、これは人間の脳のメカニズム等に基づいた「科学的」なアプローチだというのだ。その割には、著者の主張の根拠を示す科学的なエビデンスが出てくるわけでもない。出てくるのは、著者のいうことを実践していたら、このような成功をした人がいます、というような例ばかり。中には真偽のほどもわからないものもある。本当に著者の助言等によって成功したのか、たまたま成功した特別な例を紹介しているだけではないか、等ツッコミたくなるところはいくらでもある。

 



 要は根拠に乏しく、薄っぺらい。大した研究に基づく内容でないのは参考文献を見ればすぐにわかる。直接論文の中身等を漁ったわけでもなく、誰かが言っていた引用した情報を利用して科学的と言っているだけである。(ちなみに参考文献として出てくるのは、苫米地英人氏の脳に関する本や他の自己啓発系の本等)ショックな出来事等で精神的に弱くなってしまった人を取り込む宗教やスピリチュアルなセミナーと大して変わらないな、という印象を受けた。間違っても、この本の内容に釣られて「会社を辞める」等の重要な決断をしてはならない。もしそのような重要な決断をするのであれば、「思い込み」等によっては決して思い通りにならない不確定要素等も踏まえて真剣に考えて実施すべき。

 

 そして最後らへんにとんでもないことが書いてある。それは、

 

「実現するまでやり続ければ失敗はそもそもない」

 

 というものである。


 これはトートロジーってやつじゃないのか。意図したとおりに実現しない = 失敗 じゃないのか。このいかにも怪しい著者はもし「著書やセミナーのとおりに実践してみましたが、なかなか結果が出ません」と相談を受けたとした場合、

 

 「それは失敗ではない。実現するまでやってないだけです」

 

 とか言うのだろうか。 



 

 ここまで批判ばかり書いているが、この本について評価できる点はひとつだけある。それはこの本を読むことによって、「自分のメンタルはそこまで弱ってはいない」ということを再確認できることである。本当に「神メンタル」をもっている人はこの本の内容に考え方や行動を左右されたりはしない。